形とサイズから考える効果的な吊り下げバナー制作のポイント

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店舗運営やイベント装飾の世界において、「吊り下げバナー」は単なる広告物ではなく“空間づくりの要”とも言える存在です。
特に日本では、店舗の平均天井高が比較的低いことや、売場が細かく仕切られている文化的背景もあり、吊り下げバナーはお客様の視線誘導や情報整理に重要な役割を果たしています

吊り下げバナーは軽量でスペースを取らず、視認性が高く、交換もしやすいという特性から、スーパー、ドラッグストア、書店、衣料品店、ショッピングモールの催事スペース、さらには展示会場まで、幅広い商空間で活用されています。しかし、その効果を最大限引き出すには 形状の選び方、サイズの最適化、素材の選定、空間との相性、導線設計 など、意外に奥深い判断が必要になります。

このコラムでは、それぞれの観点を深掘りして詳しくまとめました。店舗づくりや販促物の設計を行う方には役立つ内容になっています。

吊り下げバナーが選ばれ続ける理由

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吊り下げバナーが商空間で根強く利用されているのは、決して「昔から使われているから」という単純な理由ではありません。
実際には、数多くある広告手法の中でも、吊り下げバナーは空間を活かしながら視線を自然に誘導できるという独自の強みを持っています。
売場の上部という“普段あまり使われていない空間”に情報を浮かべることで、邪魔をせずに存在感を発揮し、動線に沿ってお客様の目に入りやすいという大きな利点があります。
さらに、素材やサイズの柔軟さから、季節ごとに印象を変えたり、売場のテーマに合わせて雰囲気を整えたりと、空間演出の一部として高い効果を発揮します。このように、吊り下げバナーが今もなお選ばれている理由は、その空間適応力と視認性の高さにあります

  • 圧倒的な視認性の高さ
    床置きPOPや什器装飾と比べ、吊り下げバナーは“視線より上に位置する”ため、混雑時でも非常に目に入りやすい特徴があります。
    特に日本の繁忙店舗では、週末になると通路が塞がるほどの人波が発生することもありますが、吊り下げバナーはその影響を受けません。また、日本では季節商品や新商品の入れ替わりが早く、短期的に目立たせたい商品が多いため、吊り下げバナーは非常に効果的です。
  • スペースを圧迫しない柔軟性
    床面積が限られる都市型店舗や駅ナカの小型店でも、吊り下げバナーなら空間を圧迫せずに設置できます。
    近年は“コンパクト店舗”が増えているため、占有スペースがゼロに近い広告ツールとしての価値が高まっています。
  • デザイン次第で空間演出も可能
    吊り下げバナーは売場の世界観をダイレクトに表現できます。
    例えば、和風売場なら和紙調のデザイン、大胆に演出したいなら大型バナー、落ち着いた売場なら布系素材など、形状・色・質感で店全体の雰囲気が変わります。
  • 取り扱いや設置の容易さ
    軽量の紙・PP素材が多く、専門工具がなくても扱いやすいため、店舗スタッフだけでも設置が可能です。
    入れ替え頻度の高い日本の販促文化とも非常に相性が良いと言えます。

吊り下げバナーの主な形状

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吊り下げバナーの形状は、「見た目を整えるための飾り」といった単純な要素ではありません。
たとえば、縦長の形状は遠くからでも目に入りやすく、存在感を強調するのに向いています。逆に横長の形状は通路に沿って視線を流しやすく、静かに案内したい時に効果的です。
丸みを帯びたデザインは柔らかい印象を与え、尖った形状は目を引きつけて強いメッセージを伝えるなど、形状ひとつで売場の雰囲気が変化します。つまり、形状選びは売場演出の重要な設計要素であり、空間の目的やお客様への伝わり方に深く関わるポイントなのです。

長方形(縦型・横型)

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もっとも普遍的で、あらゆるシーンに適応できます。
縦型は天井までの高さを活かせるため、カテゴリー案内や目印としての効果が大きく、棚上の情報整理にも最適です。一方、横型は広範囲にメッセージを見せたいときに使われ、店舗入口付近の“横広がりの視界”と相性が良いのが特徴です。
日本の商空間は狭い通路が多いため、無難で使いやすい長方形は今も“定番中の定番”と言えます。

円形・楕円形

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情報の集中度が高い形状で、視線を一点に集める効果があります。
円形はキャンペーンロゴや目玉商品に、楕円形は少し柔らかさを残しつつも存在感を演出できます。
“丸=目立つ”という心理効果と、POP文化が根付く日本市場では特に採用率が高い形状です。
丸みのある形状は心理的に安心感を生み、季節イベントやフェアを華やかに演出します。

三角形・矢印型

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方向性を示すのが最も得意な形状です。
導線の起点や、商品棚へ誘導する際に強力な効果を発揮します。
特に日本の店舗は通路が細いため、“案内力の強い形状”として重宝されます。
角のある形のためスッキリとした印象を与えることもあり、シックな空間にも適ています。

オリジナル形状

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商品に合わせたシルエットで形状を自由に作るタイプです。
リボンのような形や古びた布のような形など、オリジナリティのあるバナーとなるため、装飾の用途でも活躍しています。
売場の世界観を壊さず、ブランドイメージを強化する手法として非常に優秀です。

吊り下げバナーの代表的サイズとその用途

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吊り下げバナーは、サイズが変わるだけで“設置できる場所”も“伝わる情報の種類”も劇的に変わります。
日本の店舗は天井高や通路幅が限られることが多いため、サイズ選びは実務上とても重要です。
ここでは、実際の売場でよく採用される3つのパターンに絞って、特長と使いどころを整理します。

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小さなサイズ(A3程度)

小さなサイズ、おおよそA3程度の小型バナーは、最も手軽でどんな店舗でも扱いやすいという大きな特徴があります。
紙など軽い素材でも十分なため、店舗スタッフが脚立ひとつで簡単に設置でき、季節ごとに頻繁に入れ替えられる点も実務的です。
棚と棚のあいだや入口横など様々な空間にそっと溶け込み、お客様の邪魔をせず情報だけを自然に追加できるため、日本の店舗文化に最も馴染んだサイズだといえます。
とくに“少し空いているスペース”を整える役割は大きく、売場の情報密度を丁寧に整理するような使われ方が多く見られます。

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横長タイプ(高さ約30cm × 幅120cmクラス)

高さを抑えた横長タイプ、たとえば高さ30cm×幅120cmほどの細長いバナーは、現代の売場で非常に人気の高い形式です。
これは、天井と棚のあいだに生まれがちな“デッドスペース”を美しく活用できるからです。通路の上部にすっと掲げられても圧迫感がなく、お客様の視界を遮らないまま、売場のテーマやフェア情報をしっかり伝えられます。
特にスーパーや商業施設など長い通路が連続する店舗では、この横長サイズが強い効果を発揮します。
情報を横方向に広げられるため、「季節の特集」「おすすめコーナー」など、歩きながら自然に目に入る訴求に非常に向いています。
天井高の低い日本の店舗環境とも相性がよく、実用性と視認性のバランスに優れたサイズと言えるでしょう。

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大型垂れ幕(長さ3m以上)

大きな垂れ幕、長さ3メートル以上の大型タイプは、吹き抜けや天井の高い空間でこそ本領を発揮します。
通常の店舗では高さが足りず使いにくいものの、ショッピングモールの中央スペースやイベントホールなどでは、むしろこの大きさでないと空間の広さに埋もれてしまいます。
大型垂れ幕は遠くからの視認性が圧倒的で、空間そのものを装飾し、演出の中心に据えることができます。
季節イベントや周年祭など、“館全体で盛り上げたい”タイミングには特に効果的で、余白を生かした大胆なデザインとともに、強い存在感を放つことができます。
ただし重量が増すため、設置には安全性の確保が欠かせず、素材選びや揺れ対策も慎重に行う必要があります。

このように、小型バナーは“小規模スペースでの柔軟な情報補足”横長バナーは“通路上部でのスマートな案内”大型垂れ幕は“吹き抜け空間での強い印象づくり”と、それぞれのサイズが得意とする領域は異なります。
売場の天井高、通路幅、導線、伝えたい情報の量、デザイン方針を踏まえて適切なサイズを選べば、吊り下げバナーは単なる掲示物ではなく、空間を整理し、お客様の動きを自然に導く“空間設計ツール”として高い効果を生み出します。

吊り下げバナーサイズ選択のポイント

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「売場の雰囲気」にサイズを合わせるという考え方

吊り下げバナーのサイズは、空間に対して“どれくらいの存在感でいてほしいか”で選んでいく方が、実際の店舗ではしっくりいくことが多いものです。

例えば落ち着いた雰囲気のショップや専門店であれば、大きなバナーは空間を圧迫してしまい、せっかくの雰囲気を壊してしまうこともあります。逆に、賑やかさや活気を表現したい売場では、小さすぎるバナーは情報が埋もれてしまい、意図した印象が伝わりにくくなります。

売場の色合いや什器の高さ、並んでいる商品の密度などを眺めながら、「この空間に吊り下げバナーが入ったら、どんな雰囲気になるだろう?」と想像してみると、自然と適したサイズが見えてきます。
大きく目立たせたいのか、それとも軽やかに補助的な役割を担わせたいのか。サイズ選びは、空間の“空気感”とそっとすり合わせるように決めていくのがポイントです。

「お客様の視線の流れ」を想像してサイズを決めるという考え方

もうひとつは、売場を訪れたお客様が“どこを見ながら歩くのか”という視線の流れに合わせてサイズを選ぶ方法です。
人は歩いている時、常に真正面を見ているわけではありません。棚の商品を探す時は少し下を向きますし、通路を移動している時はやや遠くを見ています。
そんな視線の動きの中で、吊り下げバナーが自然に目に入る場所にあるかどうかが、とても重要になります。

たとえば、通路上部に設置するなら、あまり高さがありすぎると気づかれないことがあります。一方、吹き抜けの広い空間では、大きなバナーでないと視線をキャッチできません。
お客様が足を止めて見たい情報なのか、歩きながらサッと認識できれば十分なのかによっても、最適なサイズは変わります。

つまり、サイズ選びとは「このバナーをお客様にどのタイミングで見てほしいのか?」を想像する作業とも言えるのです。お客様の視線が自然と運ばれていく場所に、バナーが無理なく溶け込んでいることそれが空間設計としては理想的な状態といえます。

まとめ

吊り下げバナーは、単に情報を掲示するだけの存在ではなく、売場の印象や流れをやさしく整える“設計装置”のような役割を持っています。
サイズや形状を空間に合わせて選ぶことで、情報が自然に視界へ入り、売場全体に統一感や心地よさが生まれ、お客様にとって歩きやすく安心して回遊できる空間づくりにもつながります。

また、実際の店舗では天井高や導線による制約も多く、最適なサイズやレイアウトに悩まれることも少なくありません。
吊り下げバナーの設計や制作でお困りの際は、株式会社メディックにぜひご相談ください。最適な空間づくりをお手伝いします。

他にも、吊り下げバナーの効果について解説したコラムをご用意しております。
種類や素材など詳しい内容となっていますので、ぜひあわせてご覧ください。