商業施設の新設やリニューアル工事に伴い設置される「仮囲い」は、一般的には「工事現場の目隠し」として認識されています。確かに、安全確保や粉塵の飛散防止など、工事現場を囲う仮囲いは、物理的な役割としては非常に重要な存在です。しかし、現代の商業施設では、それ以上に重要な役割を担っていることをご存じでしょうか?
実は、この仮囲いこそが、通行人や来館者の視線を自然と集める“注目のキャンバス”であり、工事期間中にも施設の魅力を伝える強力な「広告媒体」としての可能性を秘めています。無機質で味気ない仮囲いに代わって、ブランドカラーやロゴ、コンセプトビジュアルを用いたデザイン性の高い仮囲いが増えているのは、まさにその象徴です。
特に大型商業施設や複合施設のように、多くの人が日常的に行き交う場所では、仮囲いのデザインひとつで、訪れる人々に与える印象が大きく変わります。ただの工事中ではなく、「これから何かが始まるワクワク感」「完成への期待感」を視覚的に演出できるのが、仮囲いの魅力です。
仮囲いはもはや「仮のもの」ではありません。ブランドの顔として、施設のメッセージを発信する“メディア”であり、“空間演出の一部”なのです。つまり、仮囲いの在り方を変えることで、施設全体のブランディング力を強化し、開業前から来館者の期待感を高めることが可能になるのです。
本記事では、仮囲いの種類やデザインの工夫、実際の活用事例、ご紹介します。これから商業施設の計画や工事を予定しているご担当者の方にとって、仮囲いをいかに戦略的に活用できるか、そのヒントとなる内容をお届けします。
商業施設の仮囲いの目的と重要性
仮囲いの基本的な役割と効果
仮囲いは、工事中の安全確保や衛生面への配慮を目的として設置されます。具体的には、以下のような役割を担っています。
- 工事エリアへの立ち入り防止
- 騒音や粉塵の拡散を防ぐ
- 空きスペースや未使用区画の目隠し
しかし、その見た目が無機質であると、「工事中」「閉鎖中」といったネガティブな印象を与えてしまいがちです。そこで注目されているのが、仮囲いを工夫してデザインすることによる空間の印象改善です。
たとえば、白一色の仮囲いに木目調のラッピングシートを貼るだけでも、施設全体の雰囲気がぐっと柔らかくなり、来館者に安心感や温かみを提供することができます。このように、仮囲いは「遮る壁」から「魅せる壁」へと進化しているのです。

商業施設における掲出物の重要性
現現代の商業施設は、「モノを買う場所」から「体験を楽しむ場」へと進化しています。その中で、視覚的なコミュニケーションツールとしての「掲出物」の役割がますます重要になっています。
仮囲いもその一つ。広く目立つその面積は、新店舗の告知、フロア案内、キャンペーン情報など、多彩な情報発信の場として活用できます。特に人通りの多い動線沿いに設置された仮囲いは、来館者に向けた強力な「広告媒体」となり得ます。
新店舗の工事中であれば、オープン予定日や店舗情報を掲出することで期待感を高め、話題性を生み出すことが可能です。また、人通りの多い通路では、レストランフロアの案内や各フロアのショップ紹介、さらには季節ごとのセールやイベント情報など、来館者にとって有益な情報をタイムリーに発信する場としても最適です。
仮囲いの基本的な役割と掲出の重要性の次は具体的にデザインについて話していきましょう。
効果的な仮囲いのデザイン活用例
施設の告知・情報発信ツールとしての仮囲いデザイン
仮囲いは、「工事の目隠し」にとどまらず、「施設の告知メディア」として非常に効果的に活用できます。たとえば、リニューアルオープンの告知や新店舗への誘導、セール情報の発信など、来館者への情報提供の場として大きな役割を果たします。
特に、施設のブランドイメージに沿ったデザインを仮囲いに施すことで空間に統一感が生まれ、来館者に施設の「世界観」や「雰囲気」を伝えることが可能になります。さらに、新しくオープンする店舗のロゴやビジュアルを取り入れることで、オープンに向けた期待感を高め、注目度を引き上げることもできます。
また、退店後のスペースや工事中の区画では通路の見通しが悪くなることがあります。その際は、仮囲いに周辺店舗の案内情報を掲載するデザインにすることで、来館者の利便性向上につながります。たとえば、「この先に○○店があります」といった案内文に矢印を添える、フロアマップをわかりやすくレイアウトするなどの工夫で、来館者をストレスなく目的地へと誘導できます。
このように仮囲いは、視覚的なストレスを軽減しながら、施設と来館者のコミュニケーションツールとして大きな可能性を秘めているのです。

地域や来館者とのコミュニケーションツールとしての仮囲い
仮囲いは、イベントの演出や来館者とのコミュニケーションツールとしても大いに活用することができます。工事中という制限された空間を、逆に人々との交流の場へと転換できる、非常に柔軟で創造的なメディアといえるでしょう。
たとえば、春のイベントとして、来館者から施設への寄せ書きの場に利用したり、夏のイベントとして七夕の願い事を書く場として利用したりしています。実際、弊社で行った事例では仮囲いに織り姫と笹をデザインしたウォールシートを設置し、星形のシールに願い事を書いて貼ってもらうイベントを実施したところ、用意したスペースが来館者の願い事で埋め尽くされる程の盛況ぶりとなりました。参加型のコンテンツは、来館者に「楽しい体験」や「思い出」を提供し、施設との感情的なつながりを生み出すきっかけとなります。
さらに、地域との連携を図る手法としては、地元の子どもたちや近隣学校と協力して絵画コンテストを開催し、仮囲いをキャンバスとしてその作品を展示するという方法もあります。子どもたちの描いた絵が公共の場に掲出されることは、本人や保護者にとって大きな誇りとなると同時に、地域のコミュニティに対する施設の関心と協力姿勢を示すメッセージにもなります。このような企画は、地域住民の来館促進や、施設全体の活気づけにも大きく貢献します。
加えて、このような地域参加型展示は、施設内の回遊性を高める要因ともなり得ます。たとえば、複数の区画に異なる作品を分散して展示することで、来館者が身近な家族の作品を探したり、お友だちの作品を探したりなど、施設内を自然と巡る動線を生み出すことができ、施設の回遊を促します。更に区画の間に施設のイベント情報や今知らせたい情報を組み込むことで、より高い訴求を行うことも可能です。
このように、仮囲いは一見すると「閉ざされた空間」の象徴のように見えますが、その使い方によっては、人と人、地域と施設をつなぐ「開かれたコミュニケーションの場」としての役割を果たすことができるのです。商業施設を運営する上で、地域との関係性がますます重視される現在、仮囲いを活用したこうした取り組みは、施設のブランド価値を高め、来館者との継続的な関係構築においても非常に有効な手段といえるでしょう。

アートを取り入れた仮囲いデザインで話題創出と地域貢献
仮囲いは、地域貢献や話題づくりの場としても大きな可能性を秘めています。特に、地元アーティストの作品を掲出したり、ライブペイントを実施してもらうなど、アートの発信拠点としての活用が注目されています。
商業施設では、クリスマスやハロウィンなどの季節イベントやセール、キャンペーンに合わせてアーティストとコラボし、キービジュアルを制作することがあります。そのコラボレーションを仮囲いという場で行い、無機質な印象の仮囲いをアーティストに彩ってもらうことで、施設全体の魅力を一層高める演出が可能になります。
特に地元アーティストとのコラボレーションは、地域とのつながりを強化するだけでなく、アートによる地域活性化にも貢献します。アーティストのファンにとっても、作品が展示されている施設を訪れることは一つの来館動機となり、集客効果も期待できます。
さらに、仮囲いの設置期間をフェーズに分けて、段階的に完成していくアートとして見せることで、「次はどうなるのか?」という期待感を生み出し、再来館を促すことも可能です。制作の過程を楽しんでもらうことで、より深く作品に親しんでもらえます。
ライブペイントはSNSでの注目度も高く、ペイント中の様子を撮影・投稿する来館者や、完成したアートの前で記念撮影をする人も多く見られます。こうした投稿は施設の話題性やSNS上での拡散にもつながります。
このように、仮囲いは「隠すもの」から「魅せるもの」へと進化しています。アートを通じて人を惹きつけ、地域との絆を深め、施設全体の価値を高めるツールとして、今後ますます注目される活用方法といえるでしょう。

まとめ|仮囲いの効果を最大化するために必要な視点
商業施設における仮囲いは、もはや単なる“仮設の壁”ではありません。その面積、目立ちやすさ、設置期間の長さを活かし、以下のようなポイントに注目した活用が求められます。
- 統一感のあるデザイン:ブランドカラーや施設内装との調和を図り、違和感のない空間演出を実現
- 情報性の強化:オープン予定日やショップ情報など、来館者にとって有益な情報を掲載
- 参加型コンテンツの導入:イベントや展示など、来館者の関与を促す仕掛けを用意
- SNS映えの意識:ビジュアルにこだわり、自然と写真を撮りたくなるデザインへ
これらを意識することで、仮囲いは“施設のイメージアップ”や“来館者との関係構築”といった面で大きな成果を生む可能性を持っています。
商業施設の仮囲いは、「遮る壁」から「魅せる媒体」へと大きく進化しています。仮囲いのデザインや広告展開を工夫することで、来館者との新たな接点が生まれ、施設の魅力や価値を高める効果が期待できます。情報発信、空間演出、地域との関係性構築と、仮囲いが担える役割は多岐にわたります。だからこそ、仮囲いは自由に活用できる“キャンバス”として捉えることが重要です。
「どのようなメッセージを、どのように伝えるか?」——それを考えることが、これからの商業施設における仮囲いデザインの第一歩となるでしょう。

メディックでは、仮囲いのデザインから広告戦略までトータルでご提案しています。
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